十牛図
十牛図
第一:尋牛
人誰も、大なり小なり、この世の仕組みと成り立ちに強く心惹かれる傾向を持つのではないでしょうか。。自分が見えているこの世界とは違う別の世界があるのではないか。誰もが心の中でそのような疼きを感じているのではないでしょうか。
第二:見跡
そういう人はそのような見えない世界への知識に憧れるかもしれません。現実の外にある精神的な世界に惹かれていくかもしれません。
第三:見牛
しかし自分が見えない世界に惹かれることの一番の理由は、この世界の苦労から逃げたい。という心の衝動であったことに気が付きます。真我の探究心はいつのまにか自我の功名心にすり替わっていたのでした。
人によっては、さまざまな精神世界の遍歴という廻り道を経て、ようやくそれが自我の逃避心であった事を発見します。悟りを得たいという欲求自体が、今まで負け続けてきた自分の人生に対する一発逆転という自我の欲求であったのでした。
第四:得牛
本当の求道とは日常生活の労働の中にあることを知ります。自分が避けたかった無名の中の厳しい労働の中にこそ真理への道があることを知ります。
本当の見えない世界の秘密は、目の前の見える世界の中にこそ隠されていたのでした。
第五:牧牛
世界の事象を知るにつれ、この宇宙は、見えない世界(陰)と見える世界(陽)が同時に成立していることを知ります。陰の本質は陽として存在し、陽の本質は陰として存在します。世の中の出来事はみな陰と陽が同時に存在し、片方はオモテに現れ、しかし片方はウラに隠されていることを知ります。
陰として現れる事象の本質は陽であり、陽として現れる事象の本質は陰であります。
第六:騎牛帰家
頭で理解した宇宙の成り立ちではありましたが、今度は自分の生活の労働の中で、実践していきます。厳しい労働であるほど自分の欲している答がそこにあることを実践の中で体得していきます。
厳しい人間関係であればあるほど、厳しいノルマであればあるほど、その中に自分が切望していた宇宙の真理が隠されていることを実際に発見していきます。
陰と陽はすべて本質が逆であることを、体験として発見していきます。
第七:忘牛存人
どのような厳しい労働においてもそこから逃げることなく全てを受け入れて働く覚悟の姿勢は、結果的に周囲の人の信頼を積み上げて行くこととなります。自分の労働が人の喜び人の役に立つこととなります。
しかし私たちは見返りを求めることなく求道としての労働を探求し続けます。いつの間にか私達は、他者と自分の区別がない世界に生きていることに気づきます。
第八:人牛倶忘
もうそれは言葉ではありません。宇宙の真理はずっとそこにあったのでした。それはあまりにも自然であったためずっと自分が気付かなかっただけでした。
宇宙の真理とは大それた大仰なものでは全くなかったのでした。ありがたいことです。本当に。
第九:返本還源
自分の人生を生きているという本当に貴重な機会なのだから、精一杯生きたいです。精一杯喜び、精一杯怒り、精一杯哀しみ、精一杯楽しみたいです。
第十:入鄽垂手
そして私は再びスタートラインに戻ります。